Dec 13, 2020

湯は聴く色|GALLERIA MIDOBARU ガレリア御堂原/別府

 






湯は聴く色 

別府を訪れた人の目にそっと残る色は、温泉の湯船から見える床や壁のタイルを編み込むように描き始める。タイル模様は別府の温泉や旅館、元女廊、公会堂、店舗...古くから残っている建物に施されているもの。2年の別府滞在で、気になっていた場所のタイル模様と植物を組み合わせて描く。植物モチーフはガレリア御堂原の敷地に生えていた植物達。建築施工前に何度か通って、伐採されるだろう木々や草を撮りためていた。タイルも植物も別府の土地、足許に永くあった物物。それらは喋ることはできないけれど、土地の人々の話を聴き、土地の景色が変わってきたことを見続けて知っていることでしょう。 


-- 別府での制作 -- 

 2年間の滞在から、別府の環境にとても興味を持っていました。町中の至るところに公衆温泉のある日常。毎日、行きつけの温泉へ風呂道具を持って通う生活スタイル。他所からの旅人もさり気 なく受け入れることを繰り返しながら形作られ、時代とともに変わってきた町並み。そんな町を 見守ってきた山と川と海のある環境。環境と人の織りなす循環は町の小さな温泉へ収斂されていて、日々温泉へ通って湯に浸っていると、様々な世代の声が聴こえて来ました。 

 温泉で交わされる会話は、ご近所の人にしかわからない話題や面白い小ネタも多いのですが、楽しい話ばかりでもなく、何度か戦前戦後の記憶を聴くことがありました。昼間の温泉は高齢の方が多く来ていて、兄弟が戦地へ行って亡くなったこと、父親の顔を知らないことを常連さんと話したり、私へ話してくれたり。別府湾に花火があがる頃は思い出すのだという話を耳にしながら、じっと湯につかって、返す言葉がみつからないこともありました。そんな時でも、温泉の湯の音は止まらずにずっと流れています。大昔から今までの間、空、山、土、海を巡って湧いてくる湯を受け止めては流す床や壁のタイル模様は、職人によって工夫を凝らされながら施され、今も昔も土地の人や訪れた人との話を聴いている。愉しい話や哀しい話。裸で同じ湯につかることで、いつもは話されないような事事を。 

 タイルは温泉だけでなく、観光地や保養地として名を馳せた別府の旅館や、花街の建物にも施されていました。別府が賑やかで艶やかだった一時代が、各施設に残るタイルを通して見えてきます。一時、もと置屋の建物を、食で集う場所へ改装したBASARA HOUSEの2階にアトリエを間借りしていて、建物の古めかしい設えや間取り、階段の装飾や廊下の灯りなど見ながら、昔ここに居たであろう女性達にも想いを馳せました。温泉での会話もあって、時々、別府の町全体から女の人の哀しみと強さのようなものを感じ取ることもありました。憶測でしかありませんが、綺麗なタイル貼りを見かけると、一瞬、華やかさと切なさが同時に心へ届く。その伝わってきた感覚を私なりの色に置き換えて、空か土へ還すように、タイル模様の色々が温まって空へ昇るようにと描き留めています。

 

 2020.12.11 ine izumi



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壁紙共同制作/graf 


建築設計DABURA.m Inc

ARTキュレーション、制作管理 BEPPU PROJECT
クリエイティブディレクション、VI、ファニチャーデザイン graf


GALLERIA MIDOBARU


2020年12月18日に開業するホテル

「 GALLERIA MIDOBARU|ガレリア御堂原 」

客室壁紙の図案となる絵を二つ描きました。

内覧会の日、私は絵の前では話さず…

絵の中に居るのは好きだけど、絵と離れてその絵について話すのがとても苦手なので

コンセプトと制作過程のエピソードを紙に印刷して、一人一人にお渡ししました。

別府から生まれた色色が、旅人だけではない誰かにも届きますように。